1836年頃。字が上手だった紺屋職人の栄次郎が、
寄席のビラ(ポスター)を書くよう頼まれました。
栄次郎は、独特の書体を作り出そうと工夫を重ね、
提灯文字と芝居文字の良いところを取り入れて、
「寄席に似合う文字」を書きました。
これが寄席文字のはじまりです。
その文字は評判を呼び、あちこちで使われるようになりました。
影響を受けて同じように書く人も次々と現れ、
その中から名人が生まれて次の世代へ伝えられました。
江戸から平成へ。何人、何代もの書き手を経て、
その時代に合うように、少しずつ変化を続けてきました。
呼び名も、ビラ字から寄席文字へと変わりました。
しかし、寄席の雰囲気を映した文字であること、
願いの込められた文字であることは、変わりません。
江戸からの流れを汲む、「いま」の書き手として、
寄席文字の意味を大切に、
お客様のご希望が叶うよう、想いが伝わるよう、
一字一字、大切に書いてまいります。
春亭右乃香 しゅんてい うのか Shuntei,Unoka
1987年、橘流寄席文字家元 橘右近に入門。 1994年、橘右乃香の名を許される。
師の没後、2001年に橘流より独立、名を春亭右乃香と改める。
浅草・木馬亭の看板のほか、落語会の題字・めくりなどを筆耕。
その他、表札や看板の筆耕、ポスター、チラシ、手拭、千社札の製作など。
2006年、2012年に個展、2016年に歌舞伎文字とのコラボ展を開催。
毎日文化センター寄席文字講座、寄席文字築地勉強会を開いている。
著書に『寄席文字手ならい帖』(グラフィック社)。
東京都出身、早稲田大学第一文学部卒。